「腰を内へ」は馬に内方姿勢(進行方向に対して内方姿勢)をとりながら、蹄跡上を4蹄跡行進する収縮運動課目です。すなわち、前躯は蹄跡上を行進し、後躯は半歩(約 40c m)馬場内に入って4蹄跡を行進します。それによって前方から馬を見た場合、外方前肢一内方前肢―内方後肢一外方後肢の4肢が見えます。そして、両外方前後肢は両内方前後肢を交叉しながら踏歩します。
例:腰を内へ(右手前)(右内方姿勢)左前肢―右前肢 ―左後肢―右前肢
◇「腰を内へ」のポイント◇
- 姿勢(同手前の内方姿勢)
- 屈曲
- 進行方向
- 前躯は蹄跡上
- 4蹄跡(約35度)
この運動の目的は下記の事柄の改善と養成にあります。
- 外方後肢の負重力の養成
- 項・ガク・肋などの柔軟性としなやかさの養成(内方姿勢と馬体の屈曲の養成)
- 透過性の向上
- 運動バランスの養成
- ハミ受けの軽快性
また、この運動を行う際の騎手のそれぞれの扶助の役割は下記のようになります。
内方脚
馬の内方後肢の踏み込みおよび馬体の屈曲の促進と維持(体重は内方にかける)馬は内方脚に対して屈曲し、そして内方姿勢をとる
内方手綱
馬の内方姿勢の維持と誘導
外方脚
馬体の屈曲の維持と前方側方への推進
外方手綱
馬の外方の肩口の支持または制限
このような扶助操作は基本的にはその後の「腰を外へ」および「ハーフパス」の運動と全く同じであり、ただ馬に与える運動方向の違いだけです。また、前提条件としては馬が直線上行進において常歩・速歩で十分に透過性とセルフキャリッジを得て動けるべきで、L クラスの課目運動を正確に実施できることです。そのほか、準備作業として8字乗りや巻乗りや肩を内へからの後肢旋回などの運動課目を行っておくと効果的です。
具体的な扶助操作《腰を内へ(右手前行進)》
- その前の短蹄跡上において馬に半減却扶助を与えて、馬に正しい内方姿勢をとる。
- その後、深い隅角通過(1/4 円弧)を行いながら長蹄跡に入る。
- 隅角通過後、馬の前躯を蹄跡上に保ちながらも、後躯をわずかに(約半歩)馬場内に入れる。すなわち、馬の4肢が4蹄跡に位置するようにする。それによって前から見た場合、左前肢一右前肢ー左後肢―右後肢が見える。
- このようにして、馬の内方姿勢および馬体の屈曲の維持に注意しながら、後躯を馬場内に入れ4蹄跡を保つ(約35度)。この時、「肩を内ヘ」の運動の時と同じように外方の肩口の屈折に注意しながら、内方手綱の譲りを数回行うことを心がける。それによって馬のハミ受けの軽快性と安定性を図ることができ、流暢な動きをより得ることができる。この内方手綱の譲りはすべての運動において多かれ少なかれ必要とするものである。
- その後、隅角の手前で馬体を真直ぐにして、さらに次の隅角へ向かう。
基本的には、長蹄跡上での「腰を内へ」や「腰を外へ」の運動を実施するときは、「肩を内へ」の運動の時と同様に課目の前後は必ず馬体を真直ぐにすることです。また、このような側方運動の後は、絶えず馬を活気よく前進運動を行い、必要に応じて歩度の伸長を行います。それによって推進力を回復することができ、次の課目に前進気勢を保って臨むことが出来ます。
腰を外へ
「腰を外へ」は基本的には「腰を内ヘ」の課目と全く同様で、ただ馬の体勢の位置が逆になるだけです。すなわち、「腰を内へ」においては前躯が蹄跡上を行進するのに対し、「腰を外へ」では後躯が蹄跡上を行進し、前躯は半歩(約 40c m)馬場内に入って4蹄跡を行進します。それによって前方から馬を見た場合、「腰を内へ」の 時 と 同 様 に 外 方 前 肢 一 内 方 前 肢 ― 内 方 後 肢 一 外方後肢の4肢が見え( 約35度)、外方前後肢は内方前後肢と交差します。
例:腰を外へ(右手前)(左内方姿勢)/左後肢→左前肢 (右後肢)→右前肢
◇「腰を外へ」のポイント◇
- 姿勢(反対手前の内方姿勢)
- 屈曲
- 進行方向
- 後躯は蹄跡上(但し、「腰を内へ」の場合は後躯は馬場内)
- 4蹄跡(約35度)
この運動の目的および扶助操作は「腰を内へ」と基本的には全く同様です。ただ、「腰を内ヘ」の場合は同手前のままの内方姿勢でその運動に入いりますが、「腰を外へ」の場合は反対手前の内方姿勢に変える必要があり、それだけ「腰を内へ」の運動に入る時より多少難度が増します。それ故、騎手の感覚と扶助操作の適確性と慎重さが必要とされます。もし、雑に「腰を外へ」の運動に入ると、馬のそれまでの体勢が大きく崩れる危険性が生じます。なぜなら、それまでの手前の内方姿勢から反対手前の内方姿勢への変換が要求され、それによって初めて前躯が馬場内へ誘導されるからです。この時騎手は、それまでの馬の内方姿勢や歩調を乱さずに実施するように心がけましょう。
この「腰を外へ」の運動の準備作業として、反対姿勢の前肢旋回の運動を馬に理解させておくことはとても有効です。このときの扶助操作は、基本的には「腰を内へ」の扶助操作と全く同じです。
具体的な扶助操作《腰を外へ(右手前行進)》
- その前の短蹄跡上において馬に半減却扶助を与えて、馬に正しい内方姿勢をとる。
- その後、深い隅角通過(1/4 円弧)をおこないながら長蹄跡に入る。
- 隅角通過後、静かに内方姿勢変換(左内方姿勢)をとる。
- その後、馬の後躯を蹄跡上に保ちながらも、前躯をわずかに(約半歩)馬場内に入れる。すなわち馬の4肢を4蹄跡に位置するようにする。それによって前から見た場合、右前肢一左前肢・―右後肢一左後肢の4肢が見える。このようにして、馬の内方姿勢および馬体の屈曲の維持に注意しながら、「肩を内ヘ」や「腰を外へ」の運動の時と同じようように、外方の肩口の屈折にしながら、内方手綱の譲りを数回行うことを心がける。
- その後、隅角の手前で一旦馬体を真直ぐにした後、新たな同手前の内方姿勢をとって次の隅角へ向かう。
前提条件としては、「腰を外へ」と同様に馬が直線上行進において、常歩・速歩で十分に透過性とセルフキャリッジを得て動けるべきで、Lクラスの運動課目を正確に実施できることです。特に反対姿勢の「前肢旋回」を前もって馬に理解させておくことはとても有効です。